ドラフトチャンバーは、有機溶剤の蒸気や粉じんなどを作業者が吸い込まないよう、発生源を囲って排気する安全設備です。
価格は本体だけでなく、設置工事やダクト・電気工事、排気処理装置、点検費用まで含めて考える必要があります。
本記事では、ドラフトチャンバーの価格相場の考え方と、コストを抑える具体策をわかりやすく解説します。
ドラフトチャンバーとは?
ドラフトチャンバーとは、有害物質が発生する作業点を囲い込み、気流で捕集して屋外へ排気する設備です。安全性と法令対応の観点から、基本構造と位置づけを押さえます。
ドラフトチャンバーの基本的な役割と仕組み
ドラフトチャンバーは、作業空間を囲うチャンバー内に外気を取り込み、発生した蒸気・ガス・粉じんを前面開口部から吸い込ませて排気することで、作業者のばく露を抑えます。重要なのは、開口部の風速と気流の安定性です。
サッシの開度が大きいと捕集性能が落ちやすく、乱流が起きると漏れ出しの原因になります。排気はダクトを通じて屋外へ放出するのが基本で、対象物質によってはスクラバーや活性炭吸着などの処理設備を組み合わせ、安全と環境負荷の両面を管理します。

局所排気装置との違い
局所排気装置は、有害物質を発生源の近くで捕集して排気する設備の総称で、フード・ダクト・ファンなどで構成されます。
一方ドラフトチャンバーは、作業点そのものを箱状に囲い込む構造が特徴で、局所排気装置の分類では「囲い式」に該当します。囲い式は外乱の影響を受けにくく、捕集効率を高めやすい反面、装置本体が大きくなりやすく、設置スペースや排気風量が増えることでコストが上がる傾向があります。
つまり両者は対立概念ではなく、ドラフトチャンバーは局所排気装置の一形態として理解するのが正確です。


ドラフトチャンバーの価格・費用は?
ドラフトチャンバーの費用は、本体価格だけでなく設置工事、ダクト・電気、付帯設備、保守まで含めて総額で判断します。用途と仕様で大きく変動します。
ドラフトチャンバー本体価格の相場
本体価格はサイズ(間口・奥行き・高さ)、材質(スチール、ステンレス、耐薬品樹脂)、安全機能(風量監視、インターロック、照明・コンセント仕様)で変わります。
一般的な理化学用途の標準据え置き型は80万〜150万円が目安で、耐腐食・防爆など特殊仕様や大型化ほど上振れします。ドラフトレスやスクラバー付きなど方式が変わると価格帯も変わるため、作業物質と必要性能を先に整理することが重要です。
設置工事費の相場
設置工事費は、搬入・据付・水平調整・固定、試運転、必要に応じた開口部の養生や周辺設備の移設などが中心です。現場条件により差が出やすく、通路幅や階段の有無、エレベーター搬入可否、クレーン作業の要否で費用が変動します。
また、据え置き場所の床耐荷重や振動、壁面への固定条件、既存設備との干渉確認も工事コストに影響します。本体と同時に現地調査を行い、見積範囲を明確にしておくと追加費用を抑えやすくなります。
ダクト工事・電気工事にかかる費用
ダクト工事は、配管距離、曲がりの数、屋外貫通の有無、屋上立ち上げ、耐薬品材の選定などで金額が大きく変わります。電気工事は、専用回路の新設、ブレーカー容量の増設、配線経路、漏電対策、制御盤や警報の接続などが対象です。
建屋の制約でダクト経路が長いほど材料・施工ともに増えやすく、貫通部の防火処理や防水処理が必要な場合もあります。事前にルート案を複数出すと合理化しやすいです。
排気ファン・スクラバーなど付帯設備の費用
付帯設備は、排気ファン、風量制御(インバータ等)、排気処理装置(活性炭フィルター、スクラバー)、ダンパー、排気筒、モニタリング機器などが該当します。対象物質が臭気や溶剤、酸性ガスなどの場合、近隣環境や法令対応の観点から排気処理が必須になることがあります。
ダクトレス型は高性能フィルターで処理する設計のため、本体側の仕様が上がりやすい点が特徴です。必要性能と交換部材の入手性まで含めて選ぶと失敗しにくくなります。
保守点検・メンテナンスにかかるランニングコスト
ランニングコストは、定期点検(風速・風量の確認、漏れ・異音点検、制御・警報動作確認)、消耗品交換、清掃、故障時対応が中心です。
ダクトレス型はフィルター交換費用が継続的に発生し、スクラバー付きは薬液交換や循環ポンプの保守など運用項目が増えます。ダクト式でもファン・モーターの摩耗、ダクト内堆積、サッシ機構の劣化は避けられません。導入前に点検頻度と費用、緊急時の対応範囲を契約で確認しておくと安心です。
種類別|ドラフトチャンバーの価格相場
ドラフトは種類ごとに価格帯が異なります。用途規模と必要性能を基準に選び、初期費用と維持費の両面で最適化することが重要です。
簡易・卓上型ドラフト: 10万円〜40万円台
簡易・卓上型は、限られた作業を短時間行うスポット用途で選ばれやすく、10万〜40万円台が目安です。省スペースで導入しやすい反面、囲いの密閉性や排気能力が限定的な場合があり、扱う物質や作業量によっては性能不足になり得ます。
DIY的な運用を想定すると、排気の取り回しや安全確保が自己責任になりやすい点にも注意が必要です。使用薬品の性状と必要風速、設置環境の換気条件を満たすかを確認して選定しましょう。
標準据え置き型ドラフト: 80万円〜150万円
標準据え置き型は、研究室や品質管理部門などで一般的に採用され、80万〜150万円が相場です。間口サイズや内部材質、照明・給排水の有無、コンセント配置、監視機能の有無で価格が上下します。
安全面では、サッシ開度の管理や気流の安定性が重要で、運用ルールとセットで性能が発揮されます。導入時は本体だけで判断せず、ダクト・ファンを含めた排気設計と、点検体制まで含めて総額で比較するとコストの見誤りを防げます。
ダクトレス・高性能タイプ: 70万円〜100万円以上(排気ダクト不要、高性能フィルター)
ダクトレス型は、排気ダクト工事が難しい建屋でも導入しやすく、70万〜100万円以上が目安です。高性能フィルターで浄化して室内へ戻す設計が多いため、設置自由度が高い一方、対象物質によって適否が分かれます。
フィルターの種類と交換頻度が安全性と維持費に直結し、運用コストが想定以上になるケースもあります。導入前に、対象化学物質に適合したフィルター構成か、交換費用と入手性、飽和時の検知方法まで確認することが重要です。
スクラバー付き・高機能タイプ: 300万円〜600万円以上(排ガス洗浄機能付き、大型、耐薬品仕様)
スクラバー付きは、酸性ガスなどの排気を洗浄処理できる高機能タイプで、300万〜600万円以上が目安です。大型化や耐薬品仕様、排気量の増加により本体・付帯設備ともに高額になりやすく、設置スペースや配管、電源容量も大きくなります。
また、薬液管理、排水処理、ポンプ・ノズルの保守など運用項目が増えるため、初期費用だけでなく維持管理の体制が重要です。環境対策や近隣配慮が必要な現場ほど、有効な選択肢となります。
ドラフトチャンバーの価格が高くなる要因とは?
ドラフトチャンバーは仕様と工事条件で総額が大きく変動します。高額化しやすい代表要因を押さえ、見積差の理由を把握しましょう。
特注設計・オーダーメイド対応
特注対応は、サイズ変更やレイアウト最適化だけでなく、耐薬品材への置換、前面サッシ形状、作業台・シンク・給排水、コンセント配置、風量監視や警報など設計項目が増えるほどコストが上がります。
さらに、設計・図面作成、強度計算、部材の単品製作、試験調整の工数が積み上がり、既製品の量産メリットが効きにくくなります。既存設備との取り合いが多い現場ほど「微調整」が連鎖しやすいため、要件を先に固定して手戻りを減らすことが価格抑制の鍵です。
法令対応・安全基準への適合
有機溶剤や酸・アルカリなどを扱う現場では、必要風速の確保、排気処理、警報・インターロックなど安全機能の要求水準が上がりやすく、その分コストも増えます。防爆や耐腐食仕様が求められる場合は、部材や電装品のグレードが一段上がり、制御機器の追加や検査項目も増加します。
また、納入時の性能確認や点検体制の整備が条件になるケースもあり、導入費だけでなく保守契約を含めたトータルコストが高くなりがちです。対象物質と作業量を根拠に、必要十分な基準へ合わせるのが現実的です。
既存建屋への後付け工事
後付けは、ダクト経路の制約や貫通工事、防火区画対応、防水処理、屋上立ち上げなど「建屋側の工事」が膨らみやすい点が高額化の主因です。特に、ダクト距離が長い、曲がりが多い、屋外排気位置の制限がある場合は材料費と施工費が増えます。
搬入経路が狭い、階段搬入、クレーン作業が必要といった条件も据付費を押し上げます。事前の現地調査でルート案を複数用意し、最短・最小工事で成立する設計に寄せると抑えやすくなります。
ドラフトチャンバーの価格を抑える方法
価格を抑えるには、仕様の作り込みよりも「必要性能を満たす最短ルート」を選ぶことが重要です。導入後の維持費まで含めて最適化しましょう。
既製品モデルを選定する
既製品は量産設計のため、本体価格が抑えられやすく、納期も読みやすいのが強みです。サイズや材質、付属機能の選択肢がカタログ内に収まる範囲であれば、特注設計費や単品製作費を回避できます。
導入時は、間口や奥行きを無理に大きくせず、作業内容に合う標準サイズから検討するのが基本です。さらに、既製品同士でメーカー比較がしやすく、相見積もりによる価格交渉も進めやすくなります。結果として総額のブレが減り、費用対効果を出しやすくなります。
必要最小限の仕様に絞る
コスト増の多くは「念のため」の上乗せで起きます。対象物質、発生量、作業時間、必要風量を整理し、耐薬品材や防爆、排気処理、監視機能などを必要十分に絞ると、過剰スペックを避けられます。例えば、排気処理が本当に必要か、必要ならスクラバーか活性炭か、フィルター交換頻度は許容できるかといった観点で選び分けます。
また、給排水や収納など便利機能は費用に直結するため、別設備で代替できるかも検討対象です。仕様を固定してから見積を取ると、追加費用も防ぎやすくなります。
補助金・助成金を活用する
設備投資として採択されれば、自己負担を圧縮できます。ドラフトチャンバーは生産性向上や品質管理、安全対策の設備として説明しやすい一方、申請では「目的」「効果」「計画の妥当性」と「経費の根拠」が重視されます。
見積は複数社で取得し、仕様差が出ないよう条件を揃えることが重要です。採択後は交付決定前の発注が対象外になるなど運用ルールがあるため、導入スケジュールを補助金の公募タイミングに合わせて設計します。最新要件は必ず公募要領で確認しましょう。
ドラフトチャンバー導入で利用できる補助金・助成金
補助金は年度や公募回で要件が変わります。対象経費や申請期間、採択後の手続きも含め、最新の公募要領で条件確認が必須です。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、生産性向上や新製品・新サービスの実現に向けた設備投資を支援する制度で、設備導入を伴う計画と相性が良い補助金です。ドラフトチャンバーは品質管理や研究開発、試作工程の安全性と再現性を高める設備として位置付けやすく、導入目的と効果を数値で示すと説得力が上がります。
直近では中小企業庁の公募情報として、ものづくり補助金の公募要領公開と申請受付期間が案内されています。申請時は対象経費の範囲や手続き、スケジュールを公募要領に沿って設計してください。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新分野展開や業態転換など「事業の組み替え」を伴う投資を支援してきた制度で、設備投資が計画の中核になるケースが多いのが特徴です。ただし公募状況は時期により変動し、公式サイトでは過去回の採択結果の公表が中心となっています。
最新の募集有無や要件は、必ず公式情報で確認したうえで、該当する別制度(新設・後継枠など)も含めて検討すると安全です。ドラフトチャンバーを入れる場合は、対象事業で必要な工程・安全対策として位置付け、投資効果と売上・付加価値の見通しを一貫させることが重要です。
失敗しないドラフトチャンバーの選び方
ドラフトチャンバーは薬品特性・排気設計・設置条件で最適解が変わります。導入後に「性能不足」「追加工事」を起こさないための選定ポイントを整理します。
使用する薬品・作業内容に合っているか
まず重要なのは、扱う薬品の性状と作業のしかたに合う仕様かどうかです。有機溶剤の蒸気、酸性ガス、粉じんなど対象によって材質や耐腐食性が変わり、内部ライニングや作業台の素材選定がコストと寿命に直結します。加熱・反応・秤量など作業内容によって発生量が異なり、飛散しやすい工程では開口部からの漏れを抑える設計が必要です。ドラフトレス(ダクトレス)を検討する場合も、対象物質に適合したフィルター構成でないと安全性を担保できません。現場の薬品リスト、使用量、作業時間、同時作業人数まで整理してから選ぶと失敗しにくくなります。
必要風量と排気方式を満たしているか
ドラフトの性能は「囲い込んで吸う」だけでは決まりません。開口部の風速、風量の安定性、外乱(人の動き・空調気流)への耐性が確保できて初めて漏れを抑えられます。排気方式はダクト式かダクトレス式かで設計思想が異なり、ダクト式は屋外排気までの経路・ファン能力・圧損を含めて成立させる必要があります。ダクトレス式は工事負担が小さい一方、フィルター交換費用と適用範囲が安全性の要になります。必要性能を「風量監視」「警報」「インターロック」などの機能で見える化できるかも確認すると運用が安定します。
設置環境と工事条件を事前に確認する
導入の失敗は装置選びより「現場条件の見落とし」で起きがちです。搬入経路の幅、階段・エレベーター、扉の寸法、設置場所の床耐荷重、周辺設備との干渉を先に確認しないと、当日に追加費用や工期延長が発生します。ダクト式なら貫通部の防火・防水処理、屋上立ち上げ、排気口の位置制限など建屋側の条件がコストを左右します。電源容量や専用回路の要否、給排水・排水処理が必要かも重要です。現地調査でルート案を複数作り、最短工事で成立する計画にしておくと総額を抑えられます。
よくある質問|ドラフトチャンバーの価格Q&A
価格はタイプと仕様、工事条件で大きく変わります。ここでは検討時に多い疑問を、費用の考え方と注意点に絞って解説します。
ドラフトチャンバーの最低価格はいくらからですか
最低価格の目安は、簡易・卓上型で10万円台から検討できるケースがあります。ただし、安価なモデルは作業範囲が限定され、排気能力や密閉性、安全機能が十分でない可能性があります。研究室や製造の実務で使う標準据え置き型は80万〜150万円程度が一般的で、さらにダクト工事や電気工事、付帯設備を含めると総額は上がります。重要なのは「本体最安」ではなく、対象物質を安全に捕集できる性能を満たすかです。必要な風量・排気方式・処理設備を前提に、総額で比較するのが現実的です。
中古やリースは選択肢になりますか
中古やリースは選択肢になり得ますが、注意点が多い領域です。中古は本体価格を下げやすい一方、内部腐食やサッシ機構の劣化、ファン・制御の寿命、図面や仕様情報の欠落がリスクになります。特にダクトレス型はフィルターの適合性と交換履歴が不明だと安全性を担保しづらいです。リースは初期費用を平準化できますが、総支払額や保守範囲、途中解約条件を確認する必要があります。どちらの場合も、点検記録・性能確認・部品供給の可否をセットで確認し、導入後の保守体制まで含めて判断しましょう。
局所排気装置と比べて費用対効果は高いですか
ドラフトチャンバーは局所排気装置の「囲い式」に該当し、発生源を囲うことで捕集効率を高めやすい点が強みです。そのため、対象物質の漏れを抑えたい工程では、作業環境の安定化や安全性向上の効果が出やすく、費用対効果が高くなる場合があります。一方で、装置が大きくなりやすく、ダクト・ファン・排気処理など付帯設備が増えると総額が上がります。外付けフード等で十分に捕集できる作業なら、より安価な構成で成立することもあります。結論としては、対象物質・発生量・作業姿勢に対して「囲い式が必要か」を基準に比較すると判断しやすいです。

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